お久しぶりです。2年前に課題研究校としてお世話になった和歌山の開智中学校・高等学校です。
クラブ名がサイエンス部園芸班から農芸部へと変更しました。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。私たちは、日々課題に追われ、生きています。
まず、今年度のコムギの生育のようすの全体像をご覧ください。
▼ 今月のコムギのようす(4種類の密度条件で生育を比較)
学校の駐輪場新設のため、栽培場所が駐車場横から運動場のすみっこに引っ越ししました。
日当たり・風通しは抜群ですが、水やりが大変です。
開花時期も終盤となり、収穫まであと一ヶ月くらいです。
▼ 花期もおわり
私たちは、2年前の課題研究校のときに、指定された植え方(15個体×4列=60個体/プランター)で育てたときに、プランターの中央2列における収量が両端の2列における収量の半分程度になった原因を、栽培密度が高密度すぎたため、肥料や日光をめぐる競争が激しくなり、個体あたりの成長が抑制されたためだと考えました。
(※課題研究校で与えられるプランターは、横90cm×縦45cm×深さ25cm)
そこで私たちは、課題研究校に指定される密度に疑問をなげかけるべく、
昨年度から、【 プランターあたりの収量をより多くする最適な栽培密度 】を検討しています。
〈〈〈 昨年度の研究 〉〉〉
▼ 昨年の収穫のようす
昨年の和歌山の県大会で21の発表のうち最優秀賞をいただいたときに用いたスライドを使って研究内容を説明していきます。
■ 目 的
プランターでコムギを生育する際の最適な密度条件の検討
■ 方 法
課題研究校用のプランターの約半分のサイズ(34cm×68cm×26cm)のプランターを12個用意し、次の4つの密度条件で生育や収量を比較しました。
4個体/プランター、8個体/プランター、16個体/プランター、32個体/プランター。
(32個体/プランターの密度が課題研究校に指定される密度条件におよそ相当)
■ 結 果
プランターあたりの収量は、プランターあたりの個体数が4個体の場合が最も多く、8個体、16個体、32個体では、ほぼ同等でした。個体あたりの収量は、高密度になるほど低くなっていました。種子重は栽培密度によらずほとんど差はみられず、個体あたりの種子数は、個体あたりの収量と同じようなパターンを示しました。穂あたりの種子数はプランターあたり4個体の低密度で最も多く、32個体の高密度で最も少なかった。個体あたりの穂数も、高密度であるほうが少ない本数となりました。穂1cmあたりの種子数で定義した種子密度は、穂あたりの種子数と同じような傾向を示しましたが、穂長はどの栽培密度でも大きな差は認められませんでした。
■ 考 察
これに基づき、結果を解析すると、低密度で栽培すると、穂についた種子の密度が高くなるとともに、個体あたりの穂数が多くなることによって、個体あたりの種子数が多くなり、結果的に、少ない個体数でもプランターあたりの収量が多くなったと考えられます。少ない個体数でも効率的に高収量を目指すことができます。
課題として、プランターあたり4個体よりも低密度での収量と各栽培密度での収穫時における根の重量と群落内の照度や土壌中の肥料濃度の変化があげられます。
■ 昨年度の研究のまとめ
〈〈〈 今年度の研究 〉〉〉
昨年度の研究をふまえて、今年度はさらに密度を下げて生育しています。
昨年度の研究;4,8,16,32個体/プランター
今年度の研究;1,2,4,8個体/プランター
※ プランターサイズは昨年度と同じで、課題研究校指定のものの半分のサイズ
※ 32個体/プランターが課題研究校指定の生育密度におよそ相当
では、生育のようすをご覧ください。
▼ 1個体 / プランター(究極の低密度)
▼ 2個体 / プランター
▼ 4個体 / プランター
▼ 8個体 / プランター
▼ 余った種子を播種した高密度のプランター(課題研究校レベルの密度)
高密度であるほど、1個体の生育が悪くなり、課題研究校レベルの密度になると、1個体あたりの穂数、穂につく種子の数が顕著に少なくなり、葉の色も濃い緑色ではなく黄緑色で根元は茶色く枯れた感じの色となり弱々しい印象です。
圃場(畑)でコムギを生育する場合は、根を地下深くに張ることができるので、高密度による弊害は抑えられるのかもしれませんが、少なくともプランターでは、あまり高密度で栽培すると、根張りの競争が激化することにより、生育困難・収量減少を引き起こす可能性があります。
今年度は収穫後、プランター内の土を洗い流して、根の様子も観察できればと思います。
開智では、これからもコムギの最適な栽培条件を研究していこうと思います。